headache

頭痛外来

その痛みから解放され、「あるべき日常」を取り戻すために

頭痛は、日本人の約4,000万人が抱えていると言われる非常に身近な症状です。しかし、身近すぎるがゆえに「いつものことだから」と市販薬で済ませてしまい、適切な治療を受けずに我慢を続けている方が少なくありません。

当院では、脳神経外科専門医の視点から、頭痛の原因を緻密に特定し、最新の知見に基づいた治療を提供します。頭痛から解放されることは、生活の質(QOL)を劇的に向上させ、あなたらしい「pono(調和のとれた状態)」を取り戻す第一歩となります。

1. 頭痛の大きな分類:一次性頭痛と二次性頭痛

頭痛は、大きく分けて「一次性頭痛(頭痛持ちの頭痛)」と「二次性頭痛(他の病気が原因の頭痛)」の2種類があります。この見極め(鑑別)こそが、脳神経外科において最も重要なステップです。

① 一次性頭痛(慢性的な頭痛持ちの頭痛)

検査をしても脳に異常は見つからないものの、繰り返し起こる頭痛です。体質や生活環境、ストレスなどが複雑に絡み合って発生します。

② 二次性頭痛(命に関わる、注意すべき頭痛)

脳の病気やその他の疾患が原因で起こる頭痛です。中には命に関わるものや、一刻を争う治療が必要なものが含まれます。

くも膜下出血

「バットで殴られたような」と表現される突然の激痛が特徴です。

脳腫瘍

数週間から数ヶ月かけて徐々に痛みが強くなり、朝方に強い痛みが出ることが多いです。

脳出血・脳梗塞

麻痺やしびれ、言葉の話しにくさを伴うことがあります。

慢性硬膜下血腫

高齢者に多く、頭を打った数週間後から認知症のような症状や頭痛が現れます。

髄膜炎

高熱を伴い、首の後ろが硬くなって曲げにくくなります。

2. 代表的な一次性頭痛の特徴と治療

片頭痛(へんずつう)

a. 日本における疫学

日本では片頭痛の年間有病率は8.4%と報告され、約840万人以上の患者が存在すると言われています。男女比は約1:3と圧倒的に女性に多く、特に20代〜40代の社会的活動が最も活発な世代の女性における有病率は15〜20%に達します。

b. 片頭痛の分類と臨床経過

国際頭痛分類第3版(ICHD-3)において、片頭痛は主に以下の2つに大別されます。

前兆のない片頭痛

Migraine without aura。片頭痛全体の約7〜8割を占めます。

前兆のある片頭痛

Migraine with aura。片頭痛全体の約2〜3割を占めます。

c. 代表的な前兆症状(Aura)

前兆症状は、頭痛の発現前に数分〜数十分かけて徐々に進展し、通常60分以内に完全に消失する可逆的な局所神経症状です。

視覚前兆

最も頻度が高く、90%以上に見られます。視野の中心付近から拡大する「閃輝暗点(Fortification spectrum)」や視野欠損が代表的です。

感覚前兆

片側のしびれ、異常感覚が手から顔面へと移動するように広がる症状です。

言語前兆

軽度の失語症や構音障害がみられることがあります。

d. 片頭痛発作の4段階の臨床経過

典型的な片頭痛発作は、以下の4つの相を経て進行します。

STEP 1

予兆期(Prodrome)

発作の数時間〜数日前に生じる、生あくび、易疲労感、首や肩が凝る、過食傾向など、体のむくみ。

STEP 2

前兆期(Aura)

前述の神経症状がみられます。前兆のあるタイプに限られます。

STEP 3

頭痛期(Headache)

4〜72時間持続する拍動性頭痛。悪心・嘔吐、光過敏・音過敏を伴います。

STEP 4

後期症状(Postdrome)

眠気や集中力低下、おしっこがよく出るなどの症状がみられます。

e. 片頭痛の原因と増悪因子

現代の片頭痛の病態生理において最も有力な仮説は、「三叉神経血管説」です。

片頭痛の原因と増悪因子
CGRPと血管拡張の仕組み
01

神経因性炎症の発現

ストレスや寝不足、月経周期、天候、光や音・匂い、赤ワインやチョコレートなどのチラミン含有食品などのトリガーにより三叉神経節が刺激される。

02

CGRPなどの放出

神経終末からCGRP(抗カルシウム遺伝子関連ペプチド)などの血管作動性ペプチドが放出され、血管の異常な拡張と炎症が起きます。

03

痛みとして中枢へ伝達

この刺激が三叉神経を介して、痛みの情報として中枢へ伝達されることで痛みを感じます。また脳幹や視床のニューロンも過敏になることで悪心、嘔吐の症状が出現します。

f. 診断基準

的確な診断のために、当院では国際基準である「国際頭痛分類第3版(ICHD-3)」を厳格に適用しています。臨床で最も頻度の高い「1.1 前兆のない片頭痛」の診断基準を以下に示します。

【1.1 前兆のない片頭痛 診断基準】

  1. B〜Dを満たす発作が5回以上ある。
  2. 頭痛の持続時間は4〜72時間。未治療、または治療が不成功の場合。
  3. 頭痛は以下の4つの特徴のうち少なくとも2項目を満たす。
    1. 片側性
    2. 拍動性
    3. 痛みの程度は中等度〜重度
    4. 日常的な動作、歩行や階段を昇るなどにより頭痛が増悪する、あるいは日常的な動作を避ける。
  4. 頭痛発作中に以下の少なくとも1項目を満たす。
    1. 悪心および/または嘔吐
    2. 光過敏および音過敏
  5. ほかに適切なICHD-3の診断がない。二次性頭痛が否定されていること。

脳神経外科クリニックとしての最重要任務は、上記「E項目」の遂行、すなわちクモ膜下出血、脳腫瘍、慢性硬膜下血腫、脳静脈洞血栓症などの器質的脳疾患(二次性頭痛)をMRI等の画像診断によって確実に除外・鑑別することにあります。

3. 片頭痛の急性期治療戦略

急性期治療のゴールは、発作発現後に「2時間以内に随伴症状を伴わない完全な頭痛消失(Pain-free)」を達成し、日常生活への支障を最小限に抑えることです。

軽度〜中等度の発作

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)として、アセトアミノフェン、ロキソプロフェン、イブプロフェン、ジクロフェナク等を使用します。発作の極めて早期、予兆期〜頭痛の開始直後に服用することが重要です。

中等度〜重度の発作、またはNSAIDs無効例

トリプタン製剤

5-HT1B/1D受容体作動薬です。スマトリプタン、ゾルミトリプタン、エレトリプタン、リザトリプタン、ナラトリプタンなどがあります。血管収縮作用を持つため、心筋梗塞、脳卒中、コントロール不良の高血圧患者には禁忌です。悪心が強い場合は、点鼻薬や注射薬を選択します。

ジタン製剤

5-HT1F受容体作動薬です。ラスミジタン(レイボー)は、三叉神経終末からの神経伝達物質放出抑制および中枢性疼痛伝達経路の抑制に作用します。血管収縮作用を持たないため、心血管系リスクのある患者にも安全に使用可能です。

服用後の注意

ジタン製剤の主な副作用として傾眠、めまいがあるため、服用後の運転制限指導が必要です。

薬剤乱用頭痛(MOH)への配慮

急性期治療薬の過剰服用、NSAIDsは月に15日以上、トリプタンやジタンは月に10日以上は、それ自体が頭痛を慢性化させる「薬剤乱用頭痛」を引き起こします。当院では患者への丁寧な問診と頭痛ダイアリーの活用により、過剰服用の早期発見と予防薬へのスムーズな移行を徹底しています。

4. 予防療法と最新の抗CGRP関連製剤

発作頻度が月に4回以上の場合、日常生活への支障が強い場合、従来の経口予防薬が効果がない、または使えない場合、予防療法の適応となります。

従来の経口予防薬

患者の併存疾患に応じて、以下の薬剤を少量から開始し、数ヶ月かけて評価します。

β遮断薬

プロプラノロール

カルシウム拮抗薬

ロメリジン

抗てんかん薬

トピラマート、バルプロ酸

抗うつ薬

アミトリプチン

最新の分子標的薬:抗CGRP関連製剤

片頭痛の特異的な病態生理(CGRP)を標的としたモノクローナル抗体製剤の登場により、片頭痛予防療法は劇的なパラダイムシフトを遂げました。これらは「既存の経口予防薬で効果不十分、あるいは副作用により継続困難な成人片頭痛患者」が対象となります。

一般名(商品名) 作用機序 投与経路・頻度 特徴と臨床的意義
ガルカネズマブ
(エムガルティ)
抗CGRP抗体
リガンドに結合
皮下注射
初回2本、以降4週毎1本
治験および実臨床において、迅速かつ強力な発作頻度減少効果が証明されています。
フレマネズマブ
(アジョビ)
抗CGRP抗体
リガンドに結合
皮下注射
4週毎1本、又は12週毎3本
4週毎または12週毎、3ヶ月毎の投与サイクルを選択できるため、通院負担の軽減が可能です。
エレヌマブ
(アイモビーグ)
抗CGRP受容体抗体
受容体に結合
皮下注射
4週毎1本
受容体を直接ブロックする機序を持ち、上記2剤で効果不十分な症例への切り替え選択肢となります。

抗CGRP関連製剤のメリット

01

高い特異性による副作用発現率の低さ

主な副作用は注射部位反応程度です。

02

迅速な効果

初回投与から数日〜1週間以内に効果が発現します。

03

急性期治療薬の使用量減少

片頭痛日数の減少だけでなく、急性期治療薬のヒット率向上と使用量の減少が期待できます。

04

難治性慢性片頭痛にも有用

薬剤乱用頭痛(MOH)を合併した難治性慢性片頭痛に対しても高い有用性を発揮します。

5. 緊張型頭痛

特徴

「頭を締め付けられるような」「重苦しい」痛みが持続します。肩こりや首の張りを伴うことが多く、ストレスや長時間のデスクワークが引き金となります。

原因

頭や首、肩の筋肉の緊張と、神経の過敏化が原因です。

当院の治療

筋弛緩薬や抗不安薬、漢方薬の処方に加え、姿勢の指導やストレッチなど、生活習慣の改善提案を行います。

6. 群発頭痛

特徴

「目の奥をえぐられるような」と形容されるほど、耐え難い激痛が1日15分から数時間続き、これが数週間から数ヶ月に渡って続くことがあります。

発作時の様子

毎日同じ時間帯、夜間などに起こることもあり、痛みのためにじっとしていられず、歩き回ることが多いです。

治療

高濃度酸素吸入や自己注射薬など、専門的な治療が必要です。

7. 当院の頭痛外来のこだわり

64列マルチスライスCTによる迅速診断

頭痛診療において最も重要なのは、「その頭痛が命に関わるものかどうか」を瞬時に判断することです。当院では、最新の「64列マルチスライスCT」を院内に導入しています。

圧倒的なスピードと精度

従来のCTに比べ、短時間で広範囲かつ高精細な撮影が可能です。数秒の息止めで脳の細部までを画像化し、微細な出血や病変も見逃しません。

即日検査・即日診断

「突然の激しい頭痛」や「いつもと違う違和感」がある場合、大きな病院へ予約を取り直す手間なく、その場で精密検査が可能です。不安な時間を最小限に抑え、迅速に治療へと繋げます。

低被ばく設計

最新技術により、高画質を維持しながら放射線被ばく量を低減。身体への負担にも配慮した検査を提供します。

「薬剤乱用頭痛」を防ぐために

市販の鎮痛剤を月に10回以上服用している方は、薬の飲み過ぎによって逆に頭痛が引き起こされる「薬剤乱用頭痛」に陥っている可能性があります。当院では、薬との付き合い方を見直し、薬を減らしていくためのサポートを丁寧に行います。

頭痛ダイアリーの活用

いつ、どのような状況で頭痛が起きたかを記録する「頭痛ダイアリー」を活用します。これにより、あなたの頭痛の「パターン」と「引き金(トリガー)」を可視化し、科学的な根拠に基づいたオーダーメイドの治療プランを作成します。

「pono」な人生のために

頭痛を抱えながら仕事をしたり、家事をしたりするのは、心身に大きな負荷をかけます。頭痛をコントロールすることは、我慢を強いる毎日から解放され、あなたが本来持っているパフォーマンスを発揮できる「あるべき姿(pono)」へと戻ることです。

三宮駅から徒歩5分。仕事の合間や休日にも通いやすい環境で、脳神経外科の専門医があなたの痛みに真摯に向き合います。「いつもの頭痛」と諦める前に、ぜひ一度ご相談ください。

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